前回の記事で、今年の3月に発売されたノンアルコールワイン専門店「Holoyowaz(ホロヨワズ)」の2種類のノンアルコールワインをレポートした。
そこで、「Holoyowaz」では脱アルコール製法にこだわっているということを知った。日本ではあまり聞き馴染みのない脱アルコール製法。
なぜこの製法にこだわっているのか、そしてなぜノンアルワインの専門店を作ったのか。今回は「Holoyowaz」を展開する合同会社summaの社長 常吉 紘二さんにお話を伺った。
妻の一言で始まった「美味しいノンアルの事業」
ー常吉さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。常吉さんは、「Holoyowaz」を立ち上げる前から飲食業界にいらっしゃったのですか?
いえ、自分は実は父の代から税理士事務所をしていて、ずっと会計畑にいました。「Holoyowaz」は2020年に自分の会社を立ち上げてからできました。
ー税理士事務所から急にノンアル業界に来られたのですね。ノンアルに興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?
ノンアルに最初に興味を持ったのは妻でした。2019年に結婚し、その後妊活のため妻がお酒を飲まなくなったんです。お酒を飲まずとも一緒にフレンチやイタリアンなど美味しいものを食べに行くことはあって、その際に妻はノンアルを注文していました。僕は当時普通にお酒を飲んでいたのですが、高級店でもノンアルは烏龍茶やペリエといった普通の飲み物ばかりだったので「ノンアルに高級な物がないのはなんでだろう」と違和感を持っていたのを覚えています。
ー確かに高級店で飲めるノンアルって限られていますもんね。そこからノンアルをなぜ仕事にしようと思ったのですか?
2020年に不動産投資を始めた際に、会社を設立することにしました。その時にせっかくなら不動産投資だけだともったいない気がして妻に「何かアイディアとかある?」って聞いたんです。そしたら「ちゃんとした美味しいノンアルの事業がないから、あったらいいと思う」って。この妻の一言で始まりましたね。
(奥様やご友人とともにノンアルワインを楽しまれている様子)
ー奥様の一言が始まりだったのですね。奥様は妊活の経験からノンアルに興味を持たれたのでしょうか?
はい。妊活の期間でお酒を控えていたのですが、自分の口に合うノンアルが全く見つからなかったのがストレスだったそうです。僕は当時のんべぇだったので、自分にはない視点で面白いと思いましたね。
150種類ものノンアルワインを試飲してセレクトした脱アルコールワイン
ーノンアルを事業にしようと考えた際、どのような行動をされたのですか?
まず市場を調べていきました。日本で購入できるノンアルを勉強したり、世界中のノンアルワインを集めてみたり。妻が英語が堪能なので、英語のレビューを読みながら良さそうなものを空輸しました。150種類くらい飲み比べしました。
ー150種類...!凄すぎます。お写真もありがとうございます。
これでもほんの一部なんです。
ー150種類の中から今回は2種類。「Oddbird 」と「Thomson & Scott Noughty」を販売されることになりましたが、どうやってこの2種類を選んだのですか?
高級店で出してもらえるレベルのスペシャルなノンアルコールワインを発売するのが目的だったので、高級店で出されていてもおかしくないクオリティかを重視してこの2種類を選びました。味はもちろん、価格やパッケージ、ラベルがきちんとしているか、あとはビーガン認証されているか、熟成期間が設けられているかなどの作り手のこだわりがあるかを細かく調べましたね。
ー「Oddbird 」と「Thomson & Scott Noughty」はどちらも脱アルコール製法で製造されているとのことでした。製法にもこだわりがあったのでしょうか?
実は脱アルコール製法に元々こだわっていた訳ではありませんでした。元々試飲するまで脱アルコール製法については知りませんでしたし...ただ、150種類飲んでみて、おいしいと感じたものが脱アルコール製法で製造されたものばかりでした。脱アルコール製法は日本では一般的ではなく、原価も高いのですがやはりクオリティにはこだわりたかったので脱アルコール製法で作られた2種類を販売することにしました。
ーそうだったのですね。なぜ日本では脱アルコール製法は浸透しないのでしょうか?
問題は2つあります。1つは法律の問題、もう1つは認知の問題です。
ー法律の問題からぜひお伺いしたいです。
脱アルコール製法は、一度アルコールの入っているワインを作り、そこからアルコールを抜く製法になります。日本だと一度アルコールの入っているワインを作ってしまうと、脱アルコールをしても酒税がかかってしまうんです。
ー酒税がかかるのは辛いですね。
はい。しかも、脱アルコールをしてしまうとアルコールの分、量が減ってしまいます。また、脱アルコール製法は技術料もかなりかかります。日本だとこういった点から脱アルコール製法が進みづらくなっています。海外の方が日本よりノンアルコール文化が発展しているのもそういったルールがないためです。あとはアルコール依存症の問題も海外の方が深刻なので制度が日本より進んでいるように思えます。
ーなるほど。日本の制度の問題なのですね。もう一つの認知の問題というのはどういったものがあるのでしょうか?
日本ではまだノンアルが認知されていないですし、美味しいと思われていないと思っています。うちの商品をお店に卸に行くと「ノンアル?なんで必要なの?」と言われてしまうことがまだ多いんです。でもお店の人が認知していないだけで実はニーズはあると思うんです。
例えばレストランに行き、ノンアルが烏龍茶などしかなかったとしても店員さんに「なぜおいしいノンアルを置いていないんですか?」と聞く人はほとんどいないと思います。なのでお店側がノンアルの需要に気がつけていないと思うんです。
ー確かに、飲みたいノンアルがない場合は諦めて烏龍茶などで我慢することもあります。
ですよね!徐々に広まっては来ていて、ミシュランガイドなどに掲載されるような情報感度の高いお店に行くと「こういった脱アルコールの新しいノンアルワインを待っていたんです」と言っていただけることも増えてきました。こういったノンアルワインに需要があることを知ってもらえるとより多くの製法も日本で生まれるのではないかと思います。
スペシャルな日に飲んでもらいたいノンアルワイン
ー常吉さんの商品へのこだわりをお伺いしていきましたが、改めて、今回日本で販売することになった「Oddbird 」と「Thomson & Scott Noughty」はどんな場面で飲んでもらいたいですか?
特別な日に飲んでもらったり、特別な人へのギフトとして贈っていただけたら嬉しいです。ちょっと張り切って行くレストランなどでおいしいノンアルが置いてなくて仕方なく烏龍茶を頼む、といった場面がある人も多いのではないかと思います。そういった時にぜひ「Oddbird 」や「Thomson & Scott Noughty」を選んでいただきたいです。価格もプレゼントなどにちょうど良いくらいなので、大切なひとに贈るギフトとして選んでいただけたら、と思っています。
ー素敵ですね。ノンアルワインを浸透させることで実現したい理想などはありますか?
そうですね...今の時代、10人が集まるパーティがあったらそのうち大体1~2人はお酒が飲めなかったりするんです。今まではそういった人たちは烏龍茶などを飲んでいたと思うのですが、「Oddbird 」や「Thomson & Scott Noughty」のように見た目もクオリティもアルコールと変わらない商品が浸透することで、肩身も狭くなく堂々とノンアルを楽しめると思います。そういった世界になったら嬉しいです。
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